気づいて築くバレーボール

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コラム

凛として

これは私がまだ高校生だったころ、本気でコートに入って指導して頂いた思い出で、忘れられないエピソードです。それは高校時代の恩師である桑原博先生です。桑原先生は、体育会系というより、理論派でとても男儀のある方で、洛陽工業高校の黄金時代を築き上げながらも、あの松平監督引入るミュンヘンオリンピック時代の全日本のトレーナーだったのです。
当時、松平康隆監督や、斎藤勝コーチなどと共に歩まれたミュンヘンオリンピックのエピソードをたくさん話しいて下さいました。先生のお陰で、当時の洛陽工業の練習レシピには、全日本で行われている、松平サーカスやその他いろいろなトレーニングが盛り込まれていました。
そんな桑原先生がモットーとしておられたことが一つありました。それは自分では一言もおっしゃっていなかったのですが、私が自然に感じたことで、練習に参加する時は、「本気の姿勢」また「絶対に座らない」ということでした。
当時の高校男子バレー界と言えば、今だから言える話ですが、体罰全盛期で、本当に口では説明できない程のすごいものがありました。中には態度の悪い監督もいて、寝転んでタバコ片手に練習を見たりと、練習をどんな態度で見ようが、どんな形で接しようが、何でもありでした。気が向いたら気に入らない生徒を、殴ったり、蹴ったりと、そんなことがあたり前という時代でもあり、それが良いスタイルだと勘違いされている風潮すらありました。しかし、桑原先生はそうではありませんでした。椅子があっても腰かけることなく、何時も立って指導して頂きました。
また、当時の先生なら日の丸の入ったジャージくらい持っていらっしゃるでしょうし、100歩譲って色んなスポンサーからたくさんウエアーも支給されているはずなのですが、いつも地味な服装で、背筋を伸ばし、姿勢正しく、選手みんなが見えるところに立ち、胸をはって大きな声で指導して下さいました。その指導というのも、悪いところよりも、どちらかと言うと良いところを誉める指導です。上手く出来た時に「そうや~本郷!今のや~」と、当時先生に誉めてもらうと、とても嬉かったことを想い出します。そして何時も先生の口癖は、私達の股間に手を入れてきて「男はなっ、肝っ玉や、ここが座ってんと、勝負できひんで」というのが口癖でした。
監督が偉そうにして、気が向いたら体罰を与える風潮の中、謙虚で生徒に対しても礼儀をわきまえた、桑原先生の指導は私達にとって、新鮮で男らしくカッコよくうつりました。
そんなこともあり、現在は私もなるべく練習中は座らないようにし、また出来るだけ良いプレーは大きな声で誉めてあげるように心掛けています。今から思うと、「バレーコートは神聖な場であり、教える側も教えられる側も凛とした気持ちを持って入るべし」と言うようなことを、言葉なくして教えてもらったような気がします。
指導者は常に生徒の貴重な時間を預かっていることを念頭において、誠意のある態度で接したいものです。

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