活動日記|人間学を学ぶ月刊誌「致知」に記載!

活動?記&コラム
Activity Reports & Columns

コラム2023.04.25

人間学を学ぶ月刊誌「致知」に記載!

もうかれこれ、10年程愛読している、人間学を学ぶ「致知」に私の活動を取り上げてもらいました。

いくつになっても夢が叶うと嬉しいものです!

たくさんの方に感謝しかありません。

以下記載文章全文

子供の根を養う
バレーボール教室
本郷真也

 コロナにより三年振りの開催となった全国ヤングバレーボールクラブ男女優勝大会(U14)。昨夏の第二十五回大会で僕が指導する「気づきエンジェルズ」は全国三位という成績を残すことができました。本格的なクラブチームを立ち上げて五年、全国から精鋭が集うチームと異なり、地元・京都の〝普通〟の女子中学生が通うクラブチームを全国レベルに引き上げることができたのは、バレーの神様に導かれたとしか思えません。
そもそもこのチームは日本一を目指して立ち上げたものではないのです。二〇〇七年から始めていた「気づいて築くバレーボール教室」の中で、「本気で子供たちの人間力を育むチームをつくろう」と腹を括ってスタートしました。

 この「気づいて築くバレーボール教室」はその名の通り、日々の気づきを積み上げ、自分の力にしてほしいという願いを込めています。試合や練習はもとより、人生は気づきの連続です。しかし、ただ気づいただけでは人は成長せず、気づきから学び行動を変えてこそ、それが血肉となる。そんな考えの下、日々の練習でスキルを磨くと共に、毎月一~二回合宿を行い、選手の心育てにも注力しています。

 挨拶や礼儀、感謝の大切さといった人として大切なことを伝えた上で、目標をどう掲げてどう挑戦するかといった具体的な指導をします。心のあり方は目に見えるものではないため変化は分かりづらいものの、その後の選手の成長を見るたびに、心の根を養うことが選手としての強さに繋がっていると実感しています。

 当クラブの卒業生のある高校三年生の話です。彼女は試合中、一年生のセッターが少し悪いトスをあげた際、ムスッとした表情をしたそうです。それを見逃さなかった監督がその点を指摘したところ、彼女は「なんで私ばかりが叱られるのか」ではなく「あ、やっちゃった」と素直に反省したというのです。こうした心の土台が出来上がっている選手は着実に技術を積み上げられ、枝葉がスーッと伸びて大木へと成長していきます。

 この根と枝葉の両方を育てる指導の原点は、僕の実体験にあります。中学でバレーを始め、当時の顧問の加藤先生が大変な熱血漢で土日も構わず練習をしてくれました。加藤先生はバレー未経験だったため、スキル面以上に「エースたる者はこうあらねばならぬ」といった考え方を教えていただきました。

 中三の時にリーダーシップ力を見込まれ主将を務めたものの、体が華奢だったこともありレギュラーから外されてしまいます。その時僕を悩ませたのは、自分に何が足りず、何を頑張ったらよいのかが分からなかったこと。この悔しさ、挫折がその後のバネとなったのは間違いありません。

 高校は京都でベスト4に入る学校に進学し、そこで顧問の桑原先生と出逢います。先生は非常によく褒めてくれる上に、僕が求めていたスキルについて論理的に指導してくださり、僕の力をうまく引き出してくれました。

 両先生の影響で体育教師に憧れ、日本体育大学への進学を希望するも、家庭の事情で叶わず、9人制実業団の道を選びました。このことも当時の僕にとって大きな挫折となりました。しかし、いま振り返ると人生の辛酸を嘗めずに教員になっていたら、ろくな指導ができない先生になっていたことでしょう。

 松下幸之助さんは自身の成功の原点を「体が弱かったこと、家が貧乏だったこと、学歴がなかったこと」だと言います。多摩大学名誉教授の田坂広志先生も「あの挫折は、あの頃の自分の成長にとって必要な配剤であった」とよく語っておられます。お二方に比べたら僕の挫折は小さなものですが、中高時代の苦い経験があったからこそ監督として根を養えたと感じています。

 二十八歳で現役引退後は上場企業で働く傍らクラブチームでプレーを続け、そのご縁で三十一歳の時に京都中学生選抜(女子)の指導に携わるようになりました。翌一九九四年から十三年間は母校の中学のボランティアコーチを務め、コーチを辞めた二〇〇七年、保護者から請われる形で先述の「気づいて築くバレーボール教室」を立ち上げました。
どうすれば子供たちのやる気を引き出し、自立した選手に育てられるか――その飽くなき探究心から仕事の傍ら自費でコーチングを学びました。ここで僕のモットー「人の可能性を信じ抜き、叱らぬ指導」が確立されました。

 試合中、「もっと下がれ!」と具体的な指示を出すことはありますが、「なぜできないのか」と叱ることは一切ありません。それは選手がうまくプレーできない責任はすべて、指導者にあると考えているからです。子供は皆伸びる可能性を持っているにも拘らず、僕の伝え方が悪いからその芽を潰してしまっている。「教える、指導する」というスタンスから「子供の主体性を引き出す」に変わったことで、選手たちはイキイキとプレーし始め、僕の教室やチームには毎年たくさんの子供がこぞって集うようになりました。

 僕の本業はエグゼクティブコーチングでバレー指導はすべて無償の活動です。それでもあくまでボランティア活動として日々指導に励むのは、子供たちに未来を切り拓く力を身につけさせてあげたいという心からの願い。その一心に尽きるのです。

(ほんごう・しんや=特定非営利活動法人気づいて築くバレーボール 代表理事長/シン・リーダーコーチング代表)

⼀覧へ戻る

どんな子どもも、平等にバレーを楽しめる環境をつくるため、
気づいて築くバレーボールはNPO法人になりました。